【動物看護士が解説】犬の子宮蓄膿症とは?原因から治療法。飼い主さんができる予防法について

内科治療と外科治療では、具体的にどのように治療を行うのかを説明していきたいと思います。

内科治療

内科治療は、抗生物質やホルモン剤の投与を行います。

内科治療を選択する場合というのは、子宮蓄膿症の状態が軽い場合や、飼い主さんがどうしても子宮を残したいというような場合が挙げられます。しかし、内科療法は、完治が望めるものではなく、定期的な治療が必要となります。効果がある場合は一時的に状態を緩和させたり、元気になったりこともありますが、再発したり効果がない場合は最終的に外科治療が必要となる場合もありますし、命を落とす場合もあります。しっかり獣医師と相談することが大切です。

外科治療

外科治療とは、手術で子宮卵巣を取り除きます。子宮蓄膿症の場合はこの手術を行うというのが、一般的で最も推奨される治療方法です。子宮蓄膿症の症状が悪化してしまっている場合は、一刻も早く手術で子宮卵巣を取り除いてあげなければいけません。しかし、子宮卵巣を取り除くことや麻酔自体に抵抗があるという飼い主さんも中にはいます。その場合には、麻酔のリスクと、外科治療を行わないというリスクを天秤にかけて選択しなければいけません。手術が成功したとしても、術後に状態が悪化してしまうということもありますので、外科手術を選択する場合にもしっかりと獣医師と相談することが大切です。

犬の子宮蓄の予防法

子宮蓄膿症を完全に予防する方法は、避妊手術しかありません。避妊手術は、子宮と卵巣を取ってしまうので、まず子宮と卵巣に関する病気は防ぐことができます。
子宮蓄膿症になってしまったとしても子宮と卵巣を取る手術を行うことで、完治してその後の経過がよければ健康体に戻って通常通りの生活を送ることはできるようになります。しかし、子宮蓄膿症になってしまうと、愛犬も辛い上に、高齢や状態が悪ければ麻酔のリスクは高くなります。
そこで、この避妊手術を健康な若いうちに行うことによって、麻酔のリスクもそこまで高くはないですし、子宮蓄膿症は100%予防することができるのです。
ただし、将来的に子供を産ませたいということや、病気をしていないのに麻酔をかけるということに抵抗があるという方も実際います。もちろん、避妊手術を行わなくても子宮蓄膿症にはならず健康に寿命を全うする犬もいます。
避妊手術は、子宮蓄膿症だけではなく乳腺腫瘍や卵巣腫瘍などの避妊手術をしていないメス犬が特にかかる可能性のある他の病気の予防もできるとあって、最近では子犬のうちから勧める病院が多いです。
実際に子宮蓄膿症になってしまった愛犬を持つ飼い主さんは、まさか愛犬に限ってそのような病気にはならないだろう、またそういった病気に馴染みがなく予防できるということを知らずに避妊手術を行わなかった、などのお話もよく聞きます。
若いうちに避妊手術をやっておいたら良かった、と後悔しないためにも子供を産ませたいという希望がなければ、避妊手術での予防は大切になります。

まとめ

人にとってはあまり馴染みのない子宮蓄膿症ですが、実際に動物病院で働いていると感じるのは、犬にとっては決して珍しい病気とは言えないということです。
子宮蓄膿症の症状の多くは、多飲多尿です。そして陰部から膿がでたり、出血したり、よく陰部を気にしていたりするので生理が長引いているかもと感じたら、それは生理ではなく血膿の場合があるので注意が必要です。普段から生理の時期や間隔などを把握しておくことで早期発見にもつながります。
そして、子宮蓄膿症はそのまま放っておくと亡くなってしまうとても怖い病気です。早い犬だと、症状に気がついてから数日で悪化してそのまま亡くなってしまうケースもあります。他の病気と違って内服薬や注射などの内科治療では完治することがとても難しく、完治を望むのであれば手術で子宮と卵巣を取らなければいけません。状態にもよりますが、子宮蓄膿症と診断されてから手術を行うのはその当日にやらなければいけないような緊急手術になることもよくあります。遅くても数日以内には手術に踏み切らなければいけません。
完全な予防法も避妊手術しかなく、麻酔のリスクがまだ低い若い頃や健康な頃の避妊手術をするという選択が、後々に病気の予防になるということを踏まえて考えなければいけません。
避妊手術を行っていない場合で、これからも行う予定がないという場合は、100%の予防法ではないですが、生活環境を清潔に保ちストレスかかからないような環境作りをしてあげましょう。