犬の低血糖の原因と症状や治療法について

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犬の低血糖とは?

犬の低血糖とは、血液中の糖分(血糖値)の濃度がとても低くなってしまうことによって体内の細胞へのエネルギーや栄養補給が不足してしまいます。そのことにより、ぐったりとしたり神経症状を起こしたりなどの様々な症状を起こします。生後3ヶ月までの子犬に多く発症しやすいですが、成犬に起こることもあるので注意必要です。

血糖値とは?

血糖値とは、血液内のブドウ糖と呼ばれる糖分の濃度のことを言います。通常であればこのブドウ糖は、肝臓でグリコーゲンに合成されて蓄えており、血中のブドウ糖が不足した場合に放出されます。つまり、血糖濃度が低くなってしまうと、グルカゴンという血糖値を一定に保とうとするホルモンが分泌されて、肝臓に蓄えられてあったグリコーゲンの分解を促進することによって血中に放出されます。その反対に、血糖濃度が高くなってしまうと、インスリンという血糖を抑制する作用をもつホルモンが分泌されて、血中のブドウ糖を取り込みグリコーゲンとして蓄えたり、細胞内に取り込ませたりするように作用します。
血糖値は、グルカゴンとインスリンの作用が正常に機能していることで健康を維持できているのです。
低血糖とは、血糖値のしくみが正常に機能せず、何らかのトラブルを起こした時におこる病気です。

犬の低血糖の症状

低血糖は、健康な体の状態であれば自分の力で調整されています。しかし、血糖値が正常値の半分くらいになってしまうと血糖値を上げようと体がするので、まず交感神経症状が起こります。
さらに血糖値が下がると、中枢神経症状が起こります。
さらに血糖値が下がると、中枢神経症状が進み、命に関わります。
交感神経症状や中枢神経症状とはどのような症状かを挙げていきます。

交感神経症状

  • ぐったりする
  • 震え
  • 元気がなくなる

中枢神経症状

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 動きがゆっくりになる
  • ふらつき
  • あくび

重度の中枢神経症状

  • 意識障害
  • けいれん
  • 昏睡状態

低血糖を起こしていて、この初期症状である交感神経症状に気がつかなければ段々と悪化してしまいます。特に子犬の場合は悪化スピードも早く注意が必要です。また、低血糖と頻繁に起こしているような場合は、急に意識障害が現れることもあります。症状の出方も個体差はあるのでしっかり観察することが大切です。

犬の低血糖の原因

低血糖を起こす場合は、子犬と成犬や老犬によっては少し原因が違います。子犬の成犬や老犬に分けて低血糖を起こす原因を挙げていきます。

子犬が低血糖になる原因

環境の変化やストレス
子犬を家に迎えてすぐに低血糖を起こしてしまう場合があります。子犬を迎える時はブリーダーや知り合いの人から譲り受けた場合やペットショップから迎えた場合がほとんどですが、小さいうちから環境の変化を繰り返し経験する犬もいます。このようなことがストレスになり、低血糖の原因となることがあります。

飢餓状態

子犬の時期は、成犬よりも回数を細かく分けて食餌を与える必要があります。そのことを知らずに1日1回や1日2回などにしていてその食餌間隔が空くとすぐに飢餓状態を起こしてしまう場合があり、低血糖を起こす原因となります。

消化器の異常

子犬は、消化器も未発達な場合があります。正常に消化や吸収ができなければ、低血糖を起こす原因となります。

成犬や老犬が低血糖になる原因

インスリノーマ
インスリノーマとは、インスリンを分泌する細胞が膵臓にありますが、その細胞が腫瘍化してしまう悪性度の高い癌です。このインスリンを分泌する細胞が腫瘍化することによってインスリンの本来の働きが正常に働かなくなることから低血糖を起こしてしまいます。

膵外分泌不全

膵外分泌不全とは、慢性膵炎や慢性肝炎などによって、消化を行うために必要な酵素が分泌されなくなります。その結果低血糖を起こす原因となります。

肝機能障害

肝臓は、糖をグリコーゲンに合成して蓄え、血中のブドウ糖が不足した時に補う役割をしています。そのため、肝臓自体に何らかの障害が起こればその機能も低下してしまい、低血糖を起こす原因となります。

副腎皮質機能低下症

副腎皮質機能低下症は別名アジソン病とよばれる、副腎から出るホルモンが少なくなってしまう病気です。副腎から出るホルモンの一つにグルココルチコイドというものがあり、タンパク質を糖に変換して血糖量を上げる働きがあります。アジソン病になると、その働きが低下してしまい低血糖を起こす原因となります。

特発性

特発性とは、はっきりした原因がわからないということです。低血糖になってしまったけれどはっきりとした原因がわからない場合もあります。

長期間の飢餓状態

成犬や老犬でも、子犬と同じくらい飢餓状態が続くと血中の糖が足りなくなり、低血糖を引き起こすことがあります。食餌を与え忘れたり、劣悪な環境で十分な食餌を与えられなかったりする場合などが原因となり低血糖を引き起こします。

医原性

医原性とは、医療行為が原因となり起こることです。医原性で低血糖を起こすほとんどのケースが、糖尿病を患っている場合です。糖尿病は、血糖を抑制する働きのあるインスリンが正常に働かなくなることによって、血糖値が高い状態になっている状態です。そのため、糖尿病の犬の治療にはインスリンを投与する必要があります。しかし、そのインスリンの投与量によっては必要以上に血糖を抑制してしまい、低血糖を引き起こす可能があります。

犬が低血糖になったときの治療法

糖分補給

低血糖を引き起こした時にすぐできる基本的な治療は、糖分補給です。特に、子犬で軽い低血糖であれば砂糖水やガムシロップなどで対応できる場合もあります。しかし、重度の低血糖を引き起こしている場合は血管に直接ブドウ糖を入れてあげる必要があります。

基礎疾患の治療

成犬や老犬の低血糖の原因の多くは、膵臓や腎臓、肝臓などの基礎疾患を持っている場合に起こります。その場合は糖分だけを補給してもすぐに低血糖の状態は良くなるとは限りません。そのため、原因がはっきりしている場合は、基礎疾患の治療を同時に行う必要があります。

犬が低血糖になったときのホームケア

子犬が低血糖のような症状を起こしている場合は、家にある砂糖水やガムシロップを舐めさせることで改善される場合があります。また、食餌の内容や回数を見直す必要もあります。しかし、意識障害やけいれんなどを引き起こしている場合は、家で対応することは難しいのですぐに動物病院へ連れて行きましょう。様子をみたり放っておいたりすることで命に危険が及ぶ場合もあります。
成犬や老犬が低血糖を起こしてしまった場合も、基礎疾患が進行している可能性もありますので、すぐに動物病院へ連れて行くことをおすすめします。
また、糖尿病でインスリン投与を自宅でしている場合も注意が必要です。獣医師の指示のもと、インスリンの投与量をしっかり守り、低血糖が起こった場合はどうすればいいのかを事前に聞いておく必要があります。もし、糖尿病の愛犬が低血糖を起こしてしまった場合は、かかりつけの獣医師に指示をもらいましょう。また、定期的な血液検査に通うことで低血糖の予防にもつながります。

まとめ

低血糖は、成犬や老犬よりも圧倒的に子犬に起こることが多い病気です。そして、急に症状が現れたり留守の間にぐったりしたりしてしまうことも多く、犬を飼い始めた飼い主さんはパニックになってしまいやすいです。子犬を飼っている飼い主さんは、低血糖の症状や出来ることを知っておく必要があります。
また、成犬や老犬でも低血糖を起こすことがありますが、そのほとんどが基礎疾患や医原性によるものです。特に糖尿病を患っている愛犬がいる場合は、低血糖と切っても切り離せない関係ということを頭に入れておいて、低血糖を起こした場合にはどうすればいいのかを獣医師と相談しておく必要があります。
もしも愛犬が低血糖のような症状を引き起こした場合には、すぐ動物病院へ向かう必要があります。